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「死の谷(デスバレー)」は「あんぱん」の味!?

株式会社Inner Resource 代表取締役CEO 松本 剛弥氏

 一般的にスタートアップ/ベンチャーと呼ばれる企業は、「シード期」「スタートアップ期」「急成長期」「安定成長期」という4つのプロセスを経て成長する。そして成長するためには最大の試練と言われている「死の谷(デスバレー)」をはじめとするいくつかの壁を越えなければならない。とにかくスタートアップは、「市場で戦えるサービス」を作り上げるまで生き残ることが極めて難しく、多くのスタートアップが3年以内に死ぬといわれており、これまで数多くの起業家が「絶望」や「どん底」を味わったことだろう。突然自身に降りかかった「絶望」をきっかけに起業し、「デスバレー」を越えた先に一筋の光を見つけた挑戦者を紹介したい。

 Inner Resourceの松本代表は、突然家族が原因不明の病を宣告されたことをきっかけに起業を決意した。病気の原因もわからず適切な治療方法もわからない中、「絶望」の淵にたたされ、人生の「どん底」を味わったような気持ちだったと当時を振り返るが、自身の抱える課題の解決もさることながら、医療の未来に貢献したいとの一心で研究者を支援する立場として人生を捧げる道を選んだ。しかし、もともとこれらの業界とは無縁だった彼にとっては試練の連続であり、旧態依然とした業界に風穴をあけようと挑んだものの、業界慣習という障壁により「デスバレー」にあっけなく直面した。当初自己資金で運営資金をまかなう予定であったが、当然のことながらそう簡単にはいかず、従業員への給料も払えない時期が続き、倒産も覚悟した。

 従業員の給料が払えないということは当然自身の給料も無いわけである。ここで普通の人間ならギブアップしてしまいそうなものだが、彼は決して諦めることなく、1日1食「あんぱん」と「牛乳」だけの生活を続けながら信念に共感してくれる人を探し続けた。そしてついに資金が底を突くころ、無理を承知で某ベンチャーキャピタル(VC)の門戸を飛び入りでたたいた。ある程度信頼性のおける企業をメインに投資業務を行っていたということだったが、静かに松本氏の熱意、信念に対して耳を傾け頷くと、担当者は一言、「応援したい」と返答してくれたという。出資が決まった際はほっとした気持ちとともに、人の温かさを身に染みるほど感じた。そして、同じような悩みを抱える人のためにも、医療業界を含むライフサイエンス業界の発展に貢献しようと改めて心に誓ったのだ。

 あれから約1年半、同社の手掛けるサービスは順調に拡大している。また、プライベートにおいても病に関するはっきりとした解決策はいまだないものの、健康を維持するための対策が打てるところまで進展したそうだ。 人間、全力で「どん底」を突き詰めると、あとは這い上がるしかない。これは、多かれ少なかれ誰にでもやってくる人生の試練かもしれない。だからこそ、そこから何を学び生かしていくのかが重要であり、決して人生を諦めてはいけない。松本氏は今でも「あんぱん」を手に取ると初心に戻るという。そして、事業の成功を通じてこれまで手を差し伸べてくれた人たちに恩返しをしたいと語るその顔には希望と自信が満ち溢れていた。