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「起業戦士」には“セルフコントロール”が必要不可欠。

株式会社O:(オー)  Founder/CEO 谷本潤哉氏

 日本は1980年代初頭、世界最大の貿易黒字国となった。著しい経済成長期を迎えるとともに1985年のプラザ合意を機にバブル景気となった。ハードワークが当たり前、24時間戦えないヤツは必要ない――。「働き方改革」が推し進められている現代では考え難いが、80年代は馬車馬のように働く「企業戦士」の時代だった。「24時間戦えますか」、「5時から男」――多くの人は、かの有名なCMのフレーズを一度は耳にしたことがあるだろう。

 2000年代に突入すると、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を耳にする機会が増えた。しかし、実際に全ての業種がバランスの取れた働き方を実践できているかというといまだに疑問符が残る。サラリーマンの多くは今なお、仕事に追われ忙しい日々を過ごしているのが現状だ。しかし、悲観することばかりではない。政府による「働き方改革」の推進によって「多様な働き方」が認められ始めた新しい時代の幕が上がり始めており、以前に比べて「起業」は珍しいことではなくなった。

 起業する前は大手広告代理店においてコピーライターとして数々の案件を手掛けていたO:(オー)の谷本代表も「多様な働き方」に背中を押された一人である。彼は俗にいう「企業戦士」の時代のサラリーマンではなかったが、リーマンショックからの景気の持ち直しに世界中が奮起していた2011年に就職したこともあり、次々と舞い込んでくる仕事に追われる多忙な日々を送っていたという。大手広告代理店に勤務していただけあって数多くの有名企業の仕事を手掛けながら経験を積み重ねることができるサラリーマン生活に誇りと充実感を抱いていたのだが、立ち止まる暇さえない多忙を極める生活によって睡眠に悩みを抱えたことにより、“働きすぎ”というイエローカードを自身に突き付けた。

 そこで、睡眠不足の解消と日常から離れた場所で本格的にリフレッシュしようと、突拍子もなく一人無人島に出発した。そこで、約10日間の自然な眠りと朝の目覚めを体感し、驚くほどの爽快感に包まれた。この体験が「体内時計」に着目するきっかけとなり、「ワーク・ライフ・バランス」の伝道師となるべく、2016年に起業という道を選んだのだ。起業して変わったことはあるかと尋ねたところ、組織を離れたことで大きな自由を手に入れたことと睡眠の悩みからは解放されたと冗談交じりに笑った。しかし、組織を離れたことで以前勤務していた企業の偉大さを身に染みて感じている。体調を崩したからと言って誰も助けてくれませんからと付け加えた。

 起業する上で必要不可欠な要素「仕事(案件)」、「時間」、「健康」、「環境」、「精神力」など――。組織を出てしまえばこれらに関することは確かに全てが自己責任(セルフコントロール)である。睡眠改善を通じて健康増進を掲げる企業の代表らしく、睡眠もさることながら健康管理の一つとしてできるだけ野菜を取るように心掛けており、二日に一度はお手製の野菜ジュースを飲んでいるという。起業以来継続しているというこの習慣は、単なる健康管理ではなない彼自身のセルフコントロールであり、社会課題に立ち向かう起業家としての覚悟のあらわれなのだ。「ワーク・ライフ・バランス」の伝道師、「企業戦士」ならぬ「起業戦士」として谷本氏の挑戦に注目したい。