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「ライフワーク」を通じて得た強い使命感。ロボット製作で“2030年問題”に終止符を!

ユニロボット株式会社 代表取締役 酒井 拓氏

 昨今、政府による「働き方」改革の推進によって多様な働き方を選択することが可能な時代が到来しつつあり、終身雇用が当たり前であった日本においても「起業」を取り巻く環境の変化から安定した大手企業を退社し、人生の折り返し地点でもある40代前後でリスクを取って新たなビジネスに挑戦する人が増えている。

 元々、大手総合商社に勤務し、駐在員として海外赴任するなど、いわゆるエリート街道を進むサラリーマンだったユニロボットの酒井代表も、華麗な経歴を捨て「起業」を選んだ一人である。人生の分岐点において「起業」を選択した理由に迫りたい。

 彼は、人生において約9年間をアメリカで過ごした。1度目は学生時代、2度目は商社マン時代の海外赴任によるものだ。アメリカでは、「慈善活動」は社会構造体の一部と言えるほど盛んであり、日本とはその規模も団体の数も大きく異なっている。彼は、目の当たりにした「慈善活動」における日米の「文化」の差に強い衝撃と感銘を受け、自身でも何かできることがあるのではないかと、2007年にボランティア活動を開始し、「ポイ捨てゴミ」の課題を解決するためマンハッタンを起点としたロックフェラーセンターの冬のシンボルでもあるクリスマスツリーの周辺の清掃活動に取り組んだという。活動を通じて街が徐々に美化されたことはもちろんのこと、口コミによる賛同者や支援者の増加も相まって、ついには地元メディアに取り上げられるまでの活動規模に達した。初めて自身で手掛けたソーシャルアクションを通じて、活動の輪の広がりによる多くの人との出会い、喜び、充実感、達成感などを経験したことで自身の「ライフワーク」を見つけることとなったのだ。

 帰国後も商社で働く傍らいくつかの活動を続けていたが、特に「2030年問題」に関して強い課題意識を持っていたという。このまま日本における人口が減少の一途をたどり超高齢社会へ突入すると、労働力人口の減少→経済活動の鈍化→GDP(国内総生産)の低下→経済成長率の鈍化→国際競争力の低下→税収の低下に伴う社会保障費の不足など、さまざまな問題が発生することが予測される。そこで、酒井代表は、高齢社会の課題を解決するために介護ロボットならぬ「パートナーロボット」の製作をひらめいたのだという。しかし、ひらめき自体はよかったものの、“ディープラーニング”という言葉も世の中に浸透しておらず、業界にも精通していない・・など、畑違いの彼にとっては苦労の連続だったと、笑いながら当時を振り返った。

 商社を退職し、かれこれ数年ロボット製作に時間を費やしてきたわけであるが、成功に向けて舵を切ることができた一番の理由を、“ソーシャルアクションを通じて得た人脈”だと明かした。彼の取り組むソーシャルアクションにおけるメンバーの職業や業界はさまざまであるが、「社会課題の解決」という同じ「信念」を持った仲間だからこそ、彼の挑戦に対して自然と協力体制が構築されたのだろう。そして、各々が得意分野を生かした人脈による出資を含めた支援者や技術者等の紹介を買ってでたことによってロボット製作は一気に前進することとなった。まさに、彼らの「信念」が実を結んだ瞬間だったのではないだろうか。

 「人生は選択の連続である」という言葉は有名だが、それは、成功と失敗の繰り返しでもある。経験値や常識にとらわれるあまり、人は年齢を重ねるにつれ、だんだん選択をすることに対して臆病になっていく。人もうらやむ安定を惜しげもなく捨て、失敗を恐れることなく「起業」という道を選択した酒井代表は紛れもなく挑戦者である。彼の行動力には感服するばかりであるが、同時に彼の手掛けるロボットが『2030年問題』解決の一助となる日を心待ちにしている。