Loading

人生のお手本は生涯現役を貫いた“おばあさま”

KOANDRO株式会社 代表取締役 大澤 広輔氏
人生のお手本 KOANDRO

 日本の「起業」を取り巻く環境はこの20年で大きく変遷してきた。それ以前は、せっかく入社した大手企業を辞めて起業するなど言語道断。ひいては、ネガティブな決断をした人間であると世間から見られがちであったが、パラダイムが変わり、ここ数年起業することは珍しいことではなくなった。KOANDROの大澤代表も例外ではない。彼は大学卒業後、日本を代表する大手企業に勤めていたにもかかわらず、いわゆるエリートの称号を捨て、誰にも頼らず自分の力で生きていく「起業」という道を選択した。

 起業はそうたやすいものではないと察するが、彼はいばらの道を選択した理由を、サラリーマンとして勤めていたころ、商社は冬の時代、メガバンクは不良債権を抱えて再編中、さらには、学生に人気を博していた大手企業でもリストラが行われるようになるなど、それまで優良とされていた企業の地位が揺らぎ始めたことから、「大企業=安定」の考えに疑問を抱くようになったと説明する。ただ、この不安定な時代は起業するに当たってのきっかけとしての一つにしかすぎず、本当の理由は自身のおばあさまに対する憧れだったと当時を振り返った。

人生のお手本 KOANDRO

 彼のおばあさまは都内に医院を開業し、耳鼻咽喉科の医師として95歳まで活躍していた。幼少の頃から、働くおばあさまを見て育ち、幼心に人の役に立つ仕事をしている姿に漠然と憧れを抱いていたというが、企業が揺らぐ変遷期に外資系企業で働く知人のリストラを目の当たりにしたことや、自身の中で沸き立つキャリアへの疑問も日増しに強くなっていったことで、「いくつになっても自身の力で生きていく仕事」へのシフトを決断したのだという。

 現在、彼は、東京都品川区にある古い医院の2Fにオフィスを構えている。高層ビルやおしゃれなエリアにオフィスを構えることに憧れを抱く企業も少なくない中、なんともユニークな場所を選んだと思うが、実は、おばあさまが生涯現役として働いていた医院を改装して利用しているというのだ。スタートアップといういばらの道を選んだ元エリートは、初心を忘れないためにもおばあさまの面影が残るこの場所から出発したかったのだろう。今後の活躍に期待せざるを得ない。