Loading

失敗を悔やむよりも、成功した理由を深く突き詰めることが何よりも大切。

600(ロッピャク)株式会社  代表取締役 久保 渓氏

 政府は、成長戦略の一つとして「産業の新陳代謝とベンチャーの加速」を掲げ、ベンチャーの創業や成長促進のためにさまざまな施策を実施している。また、新たな会社法により「1円から起業」が可能になったことで起業に対するハードルは下がり、一昔前に比べると起業家を取り巻く環境は徐々に改善されているように見受けられるが、欧米諸国に比べるとまだまだ起業のハードルは高い。しかし、そんな環境下においても、時代を開拓しようと立ち上がる起業家は少なからず日本にも存在し、起業した会社を売却して新たなアイデアで再度起業する連続起業家(シリアルアントレプレナー)にも注目が集まり始めている。売却を前提とした新しい創業のカタチ、複数回事業を立ち上げる情熱とは一体何だろうか。

 現在、4社目の起業となる600(ロッピャク)を運営する久保代表も他ではない連続起業家の一人である。彼は、かつて『LINE Pay』のシステム構築に携わった経験を持つ、知る人ぞ知るツワモノだ。最初の起業は大学時代にさかのぼる。当時は学費を稼ぐためであったというが、当たり前のように高校・大学と進学し、当たり前のように企業へ就職、定年まで勤め上げる――このような風潮がまだまだ残る日本において、起業という道を今日まで選択した理由を「興味があることに対しては周りも驚くほど熱中してしまうため、他のことが視界に入らないだけですよ」と笑い飛ばした。

 物心ついた最初の専心は、政治に興味を持ったことから政治家を志してアメリカ留学を果たしたことにはじまる。生活費や学費は10代の彼に重くのしかかったが、それでも夢をかなえるため、飲食店でアルバイトをしながら勉学に励んだ。出来ることは何でも進んで行動に移し、かねてから興味のあったコンピューターサイエンスを学ぶ糧になればとIT企業のインターンも経験した。しかし、アルバイト代だけでは到底学費のすべてを賄うことができなかったため、インターンとして学んだことを生かしてウェブサービスの事業を立ち上げることとなったようだ。勉学に仕事に忙しい日々を送った結果、政治学だけでなくコンピューターサイエンスの学位も取得することとなり、晴れて卒業。また、手掛けたウェブサービス事業は、IPA未踏事業に採択されたことで、初めての事業譲渡を経験したという。これがまさに連続起業家としての原点となった。

 しかし、全てが順風満帆だったのかというと、そういうわけでもなさそうだ。卒業後、就職する道を選ばずして立ち上げたバックエンドエンジニア向けクラウドホスティングサービスのfluxflex, inc.(フラックスフレックス)は、利用料が低価格でサーバー管理の手間が不要な面が好評を得てユーザーの獲得は成功したものの、そもそもの課金モデルを作れずに失敗してしまったという。しかし、起業家の中には、一度起業したものの、事業に失敗したトラウマから安定を求めてサラリーマンという働き方を選択するという人も少なくない中、再度起業家として立ち上がった行動力には頭が下がる。

 「大したことない」と謙遜する彼は、連続起業家としての極意を一つ教えてくれた。失敗した理由をいつまでも悔やむよりも、成功した理由を深く突き詰めることが何よりも大切だと。がむしゃらに挑戦し続ける中で、例え失敗したとしてもそこから何か一つ学ぶことができれば、それは成功への第一歩である。失敗は成功のもと――。かくして現在も新たな挑戦し続ける連続起業家久保渓氏。日本の未来を変える一人となることに疑う余地はない。