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平成生まれ。“イマドキ”の起業家に学ぶ「ゆとり」

株式会社Nature Innovation Group 丸川 照司氏

 2019年4月1日、新元号「令和」が発表された。「平成」という時代は紛れもなくインターネットの発達により社会構造が大きく変化し、多様な価値観が生まれた時代であった。特に1990年代には、その生まれ年から76(ナナロク)世代と呼ばれるインターネット革命をけん引した著名なIT起業家たちを多く輩出し、「ヒルズ族」なる言葉も生まれた。その後「81(ハチイチ)世代」と呼ばれる起業家たちが続くことになる。約30年続いた「平成」の時代が幕を下ろしつつある今、この時代に生まれた若者による起業家の世代交代劇が始まりを見せている。一時は「ゆとり世代」などと揶揄された“イマドキ”の若者達が新しい時代を切り開くリーダーとして確かに存在している。

 1日70円で傘を使用できる“傘のシェアリング”サービス『アイカサ』を運営するNature Innovation Groupの丸川氏も24歳とイマドキの起業家である。傘をシェアリングするというありそうでなかった発想でサービスを具体化し、サービス開始以前から1,000人以上のユーザーを獲得した。今では渋谷を中心に、約100カ所のスポットに1,000本超の傘を設置する規模にまで成長させた注目の若手経営者だ。丸川氏は台湾人と日本人のハーフで物心つくまで東南アジアで育った。日本ではここ1~2年、多くの報道で取り上げられたことや政府の成長戦略の一つとなったことで徐々に“シェアリングエコノミー”という言葉が浸透し、「Airbnb」、「Uber」の登場を皮切りに世間的にも注目を集めるようになってきたが、東南アジアでは当たり前のように存在していたという。それがヒントとなって『アイカサ』を思い付いた。

 「これまで世の中に存在していなかった全く新しいことを自分で考えついたわけではない。みんなが笑顔になるような自分が欲しかったサービスを作っただけ」と謙遜するが、サービスには深刻化する環境問題に立ち向かうという熱い野心も込められている。日本では年間約1億3,000万本の傘が購入され、出荷から1年以内に約5,000万本の傘が廃棄されている。仕方なく購入し、二度と使わなくなるものに対して無駄を省く「エコ意識」なのだ。

 日本は、「団塊の世代」、「バブル世代」、「氷河期世代」、「ゆとり世代」――など、その世相の特徴でネーミングをつけ時代を語ってきた。今をときめく「ゆとり世代」はマイペース、ストレス耐性がない、受け身など、どちらかというとマイナスイメージで語られることが多かったように思う。かくいう私も昭和世代であるため、あまりいいイメージを抱いていなかったが、この取材を通じて「ゆとり」のイメージがガラッと変わった。無理のない学習環境で子どもたちが自ら学び考える力の育成を目指した教育というだけあって、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性を中心とした勉強以外の才能を伸ばす教育を受けてきた彼らには、その名の通り「ゆとり」が備わっている。低迷続きの日本経済の下に生まれたにもかかわらず、自分で課題を見つけ、自ら考え、行動することに疑問を抱かないからこそ、会社に頼らず自分の信念に忠実に生きようとする人材や、国際貢献、社会福祉、環境保護などを通じた社会課題の解決に乗り出す人材も生まれている。“イマドキ”な彼らが持つ柔軟さによって助け合いがしやすい社会となる日も遠くはないかもしれない。