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スタートアップとしての成長に必要不可欠な「ビジョン」。

株式会社Z-Works(ジーワークス) 代表取締役 共同経営者 小川 誠氏

 「マネジメントの父」と称された経営学者ピーター F. ドラッカーの哲学と理論は、今なお多くの経営者を魅了し、企業の成長や社会を支えている。著書において「成功を収めている企業は、われわれの事業は何かを問い、その問いに対する答えを考え、明確にすることによって成功がもたらされている」と述べており、また、「未来の社会においては、大企業、特に多国籍企業にとっての最大の課題は、その社会的正当性(Social Legitimacy)、すなわちそのビジョン、ミッション、バリューとなるだろう」と語っている。

 これらは組織が社会に存在する上でその存在意義やポジショニング、方向性までも決定づける重要な基盤となるものである。確かに成功を収めた企業には確固たるビジョン、ミッション、バリューが存在し、それらは美しい言葉によるキャッチコピーによってうまくまとめられている。では、近年、世間的にも注目を集めるようになってきた設立わずか数年の間に急成長を遂げるスタートアップ企業にとってもこれらは重要視されているのだろうか。今回その答えを教えてくれたのが、約15年間にわたる長い在宅介護生活を送った経験から「がんばらない介護」をコンセプトに「IoT介護」という新たな切り口で注目を集めているZ-Worksの小川氏だ。

 介護産業というと、日本においては2012年時点で約9兆円市場だったのに対し、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年には21兆円を超え、医療産業と生活産業を足せば100兆円を超えるという試算が出ている。「市場の拡大」と言えばビジネスチャンスのようだが、同時に「介護市場の拡大=介護が社会全体の課題となる」危険性をはらんでいる。同社は業界に先駆けたIoTデバイスの調達やプラットフォームの構築を強みとし拡大を続けているが、競合が増えて業界が成熟していけばそれだけで他社との差別化を図ることは難しくなる。そのため、将来的には、蓄積したあらゆる行動データやバイタルデータ(生態情報)などの介護ノウハウデータの分析を通じて現サービスを進化させていくとともに、そこから付加価値を生み出していくデータビジネスへトランジションしていくつもりだという。

 付加価値を生み出し、成長し続けていくためには新たな戦力(人材)が欠かせない。大きな可能性と先駆者としての面白さが同社における仕事の魅力であることはもちろんであるが、IoT介護という未成熟な分野に挑むことは容易ではない。だからこそ、チームとしてまとまるためにビジョンの共有が必要なのだという。目標を共有し、同じゴールに向かって挑み続ける忍耐力や精神力がなければスタートアップとしての成長は望めないからだ。また、ビジョンには企業の成長に向けた目標だけではなく、経営者としての想いも込められているようだ。小川氏は自身の介護経験を通じて生活の質が確実に落ちていくのを肌で感じたことをきっかけに、課題山積の介護業界に革命を起こそうとすべての人の生活の質を向上させることを目指して同社を立ち上げた。社員にも仕事(働く)を通じて生活の質を高め、その先にチャレンジすることの楽しさを感じてほしいと話す。

 創業者の強い意志によって立ち上がり、前例のない世界に挑むスタートアップにとって、どこを目指すのかというゴールを設定することがとても重要であり、そのゴール設定こそが、会社や事業の長期的な命運を定めると言っても過言ではないようだ。道に迷ったとき、常に向かうべき大きな方向を指し示してくれる羅針盤――それがビジョンなのだ。